をり鶴七変化

お家騒動に二役をからませてあって、先日観た「桃太郎侍*1の系譜を思い浮かべたが、ビデオにはさまれた「山根貞男のお楽しみゼミナール」という冊子によると、

お家騒動、女形の役者、二役と見てゆくと、「雪之丞変化」(三五)から「小判鮫」(四八)「蛇姫道中」(四九)まで、長谷川一夫の映画がつぎつぎ思い浮かぶ。

とある。ストーリー展開的には少しわかりづらい部分があったと思う。気にせずみていったらなんとかなるれど。

主人公を務めた伊原史郎氏は、常磐津総家の御曹子・岸沢輝太夫が映画界にデビューしたものだけど、その後姿をみないということで、売り出しには失敗したと思われるとの山根さんの評。わたしは、女形の台詞が大好きなのでそこがとてもナチュラルで、みかけもすっとしていてみていて好きだった。

出だしの傘のシーンはとてもはっとさされられた。山根さんも傘の波、人の波、あるいは何度も出てくる斜め俯瞰のロングショットなど、ベテラン石田民三のみごとな画面づくりとしながらも、それが、新人が画面であまり映えないので空転しているというような評。そのぶん皮肉にも渋く輝いていたと書かれているのが、脇の月形龍之介。確かに月形龍之介は目をひく。

色川武大さんの「なつかしい芸人たち」*2や、「エノケン孫悟空*3でお姿を意識して拝見して以来気になっている高勢実乗さん(山根さんによると"あのねのおっさん")の易者姿が目をひく。「ワシャ、カナワンヨー」の決め台詞も。

籠屋が定番の権左と助十かと思いきや、こちらのサイトの指摘で、助三と権十と気づく。ノリは権左と助十だった。

浪人稲葉幸助を演じた澤井三郎氏いい味。

脚本の大和田九三は石田民三ペンネーム。角田喜久雄の原作小説は、1956年にも勝新、玉緒主演の「折鶴七変化」として映画化されたと山根さんの解説にある。