明治一代女

タイトルはきいたことがあったが、こういう話だったんだ・・
川口松太郎原作 1955年伊藤大輔監督作品
映画comの解説を一部使わせてもらうと
木暮実千代演じる柳橋芸者の叶屋お梅は三代目仙之助の名を継いで一本立ちになろうとして上京して来た若手歌舞伎役者沢村仙枝と恋仲であったが、杉村春子演じる「大秀」の女将お秀が、昔仙枝の父と懇意な間柄であったのを理由に、娘の小吉をやがては仙枝の妻にと願っていたために、なにかにつけてお梅に辛く当る。(杉村さんのイジメ、堂に入ってる。また小吉っていうのが・・・っていう表現が巧い!)
いよいよ襲名披露に当たってお梅は自分が取り仕切りたいけれど、財力でお秀にはかなわない・・それをみて普段よりお梅に好意を持っていた田崎潤演じる箱丁の巳之吉が故郷の塩田を売って資金をつくり襲名披露とげたあとはすっぱり一緒になろうという約束をしてくれるが・・というストーリー。

巳之吉の作ってくれたお金が、大きすぎる金額が動く襲名披露の前では微力にしかならず、せめてそれをひとつの形にしてほしいと沢村仙枝に会おうとするも会えないことから、巳之吉に申し訳がたたないと、説明がつくまでお梅は巳之吉に会わないところから悲劇が起きるが、これは誤解されても仕方ないだろうとみている現代人の自分は思ってしまう。歌舞伎や文楽をみていても説明不足から起きるドラマに対しいつもそういう風な思いが一瞬頭をもたげ、いやいやこれはそういう世界を味わうものだからと思い直すようにしているが、お梅はやっぱり仙枝の方をずっと好きで、巳之吉という人間と一緒になったとしても本当に巳之吉が好きでというのとは違う感じにみえる。

仙枝を演じた北上弥太朗という俳優さんはこちらによると歌舞伎出身で、のちに歌舞伎に戻られた方という。(こちらによると本名が北上弥太郎という表記らしい。)「三人吉三」の舞台が最初出てきて、お嬢吉三を演じられるが、とても仇っぽく鮮やか。最後も「地雷也」の所作とうまくあわせてあるのはおもしろい趣向。

尾上梅寿郎を演じた市川小太夫氏も歌舞伎の世界での地位がうかがわれるような存在であることの気配がさすが。お二人とも大庭監督の「残菊物語」*1に出ておられるよう。

お梅が潜伏した、黒澤明の「どん底」を思わすような場所、猿回しの人やらなにやら祝儀もののようなものの内職をしている人やら作りこんであって気になる風情だった。

明治一代女 [VHS]

明治一代女 [VHS]

  • 発売日: 1990/04/10
  • メディア: VHS