古都

山口百恵主演の市川崑監督版。(1980年)
市川監督の風景の中の人間のショットは美しいと思う。町家などの前に町家のアクセントとして佇む人の姿。町家の中でも住まいに高いポイントが置かれているように思うしその撮り方は魅力的。
山口百恵はとても美しく、境遇が違ってしまった双子の演じ分けが巧みにできている。京都弁も結構がんばっている。(時々は気になるけれど)

「古都」*1中村登監督バージョン、平成版(昭和版の主人公が母親になっている将来を描いたストーリー)*2とみてきたけれど、基本は同じでも力の入れ具合が違う。中村登監督のでは、宮口精二演じる父親の思い詰めっぷりが心に残っている。この映画では、そこもさらりと描かれつつも、それを冷ややかにみるいけずな常田富士夫演じる番頭とその配下の住み込みの小僧さん二人の姿が印象的。悪口を小僧に言わせておいてたしなめる高等テクニックまで駆使。この映画では父親役が實川延若氏。名前はきいていたけれど、はじめてお姿を確認したと思う。

市川監督の「おはん」(1984)*3でも思ったのだけど、タイアップ企画なのか、この映画では山口百恵歌うところの歌謡曲が、「おはん」では五木ひろしの歌が冒頭かかるのは好みにあわない。もう少し年代がたって、リアルの二人をよく知らない世代の人たちには資料映像としておもしろいかもしれないが。。音楽の使い方も時代のせいかちょっと安っぽい。

あと市川監督の映画をみると思わせぶりなカットというのが特徴のような・・ちょっとしたショットでも意味深だったり、なにかを予感させてドキッとしたり・・

ばらばらに育った双子に巡り合えての気持ちの深まりは幼くして孤児だった川端康成の乾きからきているのかな・・また中村登監督版で強く感じ、この映画にも少し描かれている父親の惑いも川端自身の気持ちを反映しているようにも思われる。

火災で改築する前のイノダコーヒが映っているのも貴重だと思う。
沖雅也さんも、映画での演技をしっかりみたのははじめてくらいかも。実務的で骨のある男性を好演。


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