海盗り 下北半島・浜関根

原子力船むつの母港となろうとしていた下北半島・浜関根を映したもの。
映画を作った青林舎から出ている「海盗り」という1984年当時の売価500円のブックレットも一緒に貸し出してもらう。
映画の方でアウトラインのみつかんだ漁業権の問題などがブックレットに丁寧に書かれていて理解を助けてくれる。下北半島は戦争中も軍事防衛上地図が白塗りになっていた時代があるというが、(隣の津軽半島太宰治の「津軽*1にも防衛上海岸線のことを詳しく書けない旨が記されていた)今も基地などもたくさん建てられ・・「お国のため」という漠然とした気持ちでちゃんと法律で守られている条項を調べていかないと丸め込まれ、生活を奪われるというような実体、今あちこちで起きており、政治家なども口走ってしまう、危険なものは人の少ないところへの思想、悪しき多数派制みたいなものが行われてしまうという気持ちになった。

原子力船むつの問題、名前だけはきいていたが、本当に情けないことにそれだけの知識であったけれど、この映画をみたことをきっかけに検索してみたら、この映画の舞台は、日本原子力研究開発機構所有の関根浜港になっていて、使用済み核燃料の燃料中間貯蔵施設への荷揚げ港*2になっていたり、むつ科学技術館というものが建ったりしているらしい。映画に出てきた風景との差に驚く。

先日京都市左京区の書店ホホホ座で「ドキュメンタリーマガジン neoneo」の2016年夏号を購入したら特集2がこの作品の監督、土本典昭特集であったが、佐藤奈緒子さんというライターが書かれた「アフガニスタンに散った花」という原稿が心にとまった。

モフセン・マフマルバフ監督の

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない
恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

という言葉*3から書きだされている原稿、1970年〜80年土本監督がアフガニスタンの切り抜きを集めていかれたこと、「在りし日のカーブル博物館1988年」(03)に破壊される前のカーブル博物館の展示を丹念に撮影した貴重な記録がおさめられていることを知り、この作品に出てくる浜関根の風景に思いを馳せた。タイトルだけ知っていてまだみぬ、パトリシオ・グスマン監督の「チリの闘い」もはからずも1970年チリで誕生したアジェンデ大統領の社会主義政権が倒れる、民主主義の最後の瞬間を映してしまったという事実を知る。

そして、またこの雑誌には「六ケ所村ラプソディー」や「ヒバクシャ」の監督鎌仲ひとみさんの文章も載っており、この作品とともに、倉本明子監督の「六ケ所人間記」という作品や、土本監督の「原発切抜帖」にも興味を持った。「原発切抜帖」は、小沢昭一のナレーションが柔らかくユーモラスでありながら、誰もかって指摘し得なかったような原子力への鋭い切り口を鮮やかに提示しているという。

海盗り -下北半島・浜関根- [DVD]

海盗り -下北半島・浜関根- [DVD]

  • 発売日: 2014/04/26
  • メディア: DVD
みたのはVHS版

*1:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20150501/1430480684

*2:wikipediaより

*3:現代企画 2001年 同タイトルの書 27P 93Pからとのこと