大江山酒天童子

この夏文楽で鬼童丸と金太郎が闘う部分をみた。*1鬼童丸、牛の皮をかぶって待ち伏せしたというけれど、この映画では登場時、ひょうきんな音がついていて、親しみを持ってしまう。
朝廷の討伐ものって、勝った側の歴史というところがあるだろうなと、思いながら見始めたが、まさにこの映画では、長谷川一夫演じる酒天童子が、権力の横暴に異を唱える人物として描かれていた。*2
源頼光役は市川雷蔵。気品があって役柄にぴったり。酒天童子にいる大江山に山伏の恰好をして皆乗り込むのだけど、そこでのやりとりは勧進帳。「延年の舞」を舞えといわれ、義経的な頼光をかばって舞う勝新演じる渡辺綱。「とうとうたらりとうたらり」と聞き覚えのあるフレーズ。
渚の前というこの映画の中では、酒天童子(橘致忠ということになっている)のそもそもの妻を演じた山本富士子。平安風の眉が似合っている。
中村玉緒演じるこつまという、渡辺綱の妹役だったが、兄妹役としての勝新太郎とのツーショット、息があっているようにみえた。
茨木童子がとても魅力的にみえた。歌舞伎にも出てくるらしいが、この映画では女性。(女性という説もあるらしい。)中性的な魅力。あとで調べたら左幸子だったのか!確かに迫力あったな。
大江山の岩がごつごつして荒涼とした感じだったのは、こちらのサイトによると秋吉台で撮られたらしい。
スタッフロールをみたら、父の友人の土井茂さんのお名前が助監督としてあがっていた。故人となられたが、おはなししたこともあり、この映画、先にみていればいろいろな話を聞かせてもらえたかもしれないのに・・と思う。土井さんがこの現場のどの辺にいらっしゃったのかな、などと偲びながら鑑賞。

大江山酒天童子 [VHS]

大江山酒天童子 [VHS]

*1:http://d.hatena.ne.jp/ponyman/20170730/1501551082

*2:この映画で酒呑ではなく、酒天という字をあてているのはそこら辺もあるのかなと思ったり・・・windshipさんの日記によると、作られた当時の世の中の状況をとても反映しているらしい。