天皇の世紀 第一部

 

天皇の世紀 DVD-BOX  (4枚組)

天皇の世紀 DVD-BOX  (4枚組)

 

みたのはvhs版

 

先日みたドキュメンタリーになっている第二部*1のはじまりに、大佛次郎氏のことばとして、「天皇の世紀」はドラマ仕立てではなくドキュメンタリーとしてまとめてほしいという意向が語られているのだけど*2この第一部はドラマ仕立てになっていて、大佛氏はこの第一部に違和感を感じられることもあったのかなと推測しながらみはじめた。

vhs版は6巻になっていて、1巻につき、2話ずつ話が入っているが、それぞれ監督や脚本家が違っていて、エピソードがこちらの心にすっと届くものと、斬りあいや切腹などの時代劇的シーンが強調されすぎていると思われるものとに分かれた。大河ドラマ的なまとめかたではなく、最後のほうは薩摩中心に描いた幕末のエピソードが、つぎは長州を主体にかたられ、その次は土佐の背景から描かれていたりと、層を重ねる感じでそこは興味深かった。

心に残っているのは、吉田松陰の回(第二話「野火」石堂淑朗脚本、下村堯二 演出 メタフィクション的なシーンなどもおもしろかった。)長崎で大砲の研究を世に先駆けてして重宝もされたのに弾圧された高島秋帆の回(第三話 「先覚」 脚本 本田英郎、演出 高橋繁男、 高島秋帆を演じるのは、中村翫右衛門鳥居耀蔵という取締役を伊藤雄之助がいやったらしく演じている)西郷と島津久光とのことを描いた回(第九話「急流」 早坂暁脚本 三隈研次演出 佐藤慶島津久光が冷たい・・)、および薩英戦争から講和に向かうその後の薩摩を描いた回(第十話「攘夷」早坂暁脚本、篠田正浩演出 この回も佐藤慶島津久光だが、前の回とちょっと雰囲気違う。草野大悟演じる大久保一蔵が魅力的。)高杉晋作の回(第十一話「決起」新藤兼人 松田昭三脚本、下村堯二演出 魅力的な高杉を演じたのは原田大二郎。野村望東尼の香川京子、楚々として落ち着いていて美しい。)、土佐の回(第十二話「義兵」岩間芳樹脚本、佐藤純弥演出)。監督や脚本家によってこちらに届く印象がかわってくるというところはあるだろうが、全体を通してみたとき、先にみた第二部から感じた、この国の舵取りをするにあたって大事にしなければいけないのはこういうことではないか、歴史から学ぶとはそういうことだろうという大佛氏の信念、考え方の筋道がみえてくる。

吉田松陰、獄中生活からか病弱のようなイメージがあり、若き原田芳雄氏が演じておられるのを、珍しいもののようにみはじめたが、外国に渡ろうとしていたときの熱さや、しかし細かな配慮は怠らなく、接した人に大切に思われた姿など魅力がきちんと伝わった。

高杉晋作も自分のまわりに好きな人が複数いるんだけど、その機動力や発想、方法のおもしろさなどを感じることができた。

土佐の武市半平太吉田東洋とのエピソード、土佐のことも龍馬中心でなく、もう少し全体の流れを理解できるようになっていた。細川俊之氏の時代物が新鮮。志村喬が演じる吉田東洋の魅力的なこと。

米倉斉加年の薩摩の人斬り新兵衛(田中新兵衛)の不気味なこと。山田太一のドラマ「夕暮れて」で人のよい感じだけどどこかコワいものをにじみ出させておられたのを思い出した。そちらの引き出しを今きっちりと認識したという感じ。

薩摩が海軍、長州が陸軍というその後の流れにふれたところも興味深い。海軍がこうで陸軍がこうでという通説も研究が進むにつれ少しずつ変化もしているようではあるけれど、歴史的な流れの知識を得られた。

山口崇氏の龍馬の姿、ドラマ「天下御免」の平賀源内のなつかいしい姿を思い出したが両方71年の作品だったんだ。。

 

*1:天皇の世紀 第二部 - 日常整理日誌

*2:wikipediaによると、「テレビの一番本質的な力は、なまの真実を伝える事であります。それで多くのドラマの時代劇のように、見てしまってか『あぁ ばかを見た』ということにならぬよう、私は『天皇の世紀』のテレビ映画をなるべくドキュメンタリーの方向に持って行っていただきたいとお願いしました。」と紹介されている。

映像の世紀 第一集


www.nihon-eiga.com

日本映画専門チャンネル時代劇専門チャンネルで12/24同時一挙放送するとのことで先日第一集を放映していた。

歴史の理解がすんなりいくということで評判をきいていたけど、ほんとに、整理された生の記録というのはとてもありがたい。

くらべていうのはなんなんだけど、このところ、フランク・キャプラが作った第二次世界大戦の戦意高揚映画「Why We Fight」*1をみていたのだけど、とにかく目的を達するために資料を集めて作っていて、劇映画からの映像とニュースフィルム的なものが混ざっていて、それと日本が敵国であるからもちろん、釈明の余地のない感じで描かれており(事実もあるだろうけど、やはりそこは当たり前のずれも感じてしまって)、残っている映像を整理して、それがこういう映像であろうと伝えてくれる「映像の世紀」のまとめ方のありがたみをえらく感じているところなのだ。撮影されたときから一定の時間が経って一応ちゃんと説明できる域に達している情勢というのもあるのかな。

第一集では、たとえばちょうどヴィクトリア女王の逝去の頃渡英した夏目漱石の書いていた文章とそのころ漱石がみていたであろう風景をうまく編集してとてもわかりやすく編集してあった。誰が撮ったどういう映像であるのかがちゃんと説明されているところがとてもありがたい。ロマノフ王朝の最後を紹介するあたりでのラスプーチンと思われる人物を確認がとれてないとの事実とともに伝えてくれる丁寧さに好感を持つ。

トルストイの晩年の映像が、ガンジーにあてた書簡とともに紹介されていたが、トルストイを遠い昔に生きた書棚の中の人物というのでない、その人生のなかでいまを生きる自分に届くことばを綴っていた人としてとても身近に感じはじめている。

清国の最後の方の映像も当時の庶民の実態がどういうものだったのか、とてもわかりやすい形で自分に伝わっている。

 

フランク・キャプラの第2次世界大戦~戦争の序曲  WHY WE FIGHT

 少し前に1,2巻*1だけみていたフランク・キャプラの「Why We Fight」の3巻から先をみる。下のアマゾンの一覧には、もともとの6巻である「日中戦争」の巻は載っていない。もろ日本の話で、はじめは発売が見送られたとか?このビデオ群の中でも日中戦争の巻だけ吹き替えでなく、字幕。3,4巻はヨーロッパの話で、「これがダンケルクか・・」などの感慨があったのだけど、とにかく、戦意高揚映画だけあって(きくところによると、ハリウッドはヨーロッパから迫害されてやってきた人たちが多くを占めていて、ファシズムへの拒否感が強く、政府よりずっと戦争に前のめりだったよう。こちらの記事もそのあたり参考になった。)ロシアだとか、中国だとか当時の味方をすごく礼賛している・・・なんかその後のアメリカとの関係を思うと不思議な気持ちになるけれど、それは後からみて思うわけで、当時を知るための映画だ。「このフィルムは歴史的に重要な価値を持つものであるが、この映像を提供する組織の現在の政策や方針を反映するものではない」というような注意の言葉が毎巻しょっぱなに流れるのもそういうことかな。大林宣彦監督が、アメリカの戦争ドキュメンタリー映像に理解しやすければ平気で劇映画がまざっているという話をされていたが(かなり肯定的ないいかたで、伝えことを伝えるのがベストだからと)、この映像がまさにそれで、みているこっちはどこまでがリアルなんだ・・と、逆になんかみてきたような話をきかされているような気分にもなる。でも、こういうものが作られ流されていた、そこが一番大事なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤間勘十郎 春秋座 名流舞踊公演

演目は
君が代松竹梅 と
通し舞踊劇 凄艶四谷怪談

舞踊公演ということでわかりにくかったらどうしようなどと思いながらみにいったが、四谷怪談という有名なはなしであることも手伝い、また、勘十郎さんの踊りの表現力でもって、何役もこなされてはいたけれど、所作でいまどの役なのかというのはくっきりとわかった。そのありさまをみて、外側はミニマムな変化で玉三郎さんが男女二役をこなされたのが見事だった映画「ナスターシャ」を思い出した。

幸福号出帆


www.allcinema.net

 

三島由紀夫原作のこの作品、映画「黒蜥蜴」や、橋本治三島由紀夫の評伝*1にこけおどしのような彫刻のそびえるはりぼてのように空疎な豪邸というような意味のことが書かれていたのも思い出した。三島さんって夢見るところがあるんじゃないかとか思ったり。遺産を巡ってそれまで貧乏生活をしていた加藤治子とその家族が、豪邸に住む高峰三枝子のところに乗り込むようなはなしだけど、地に足ついてなくて、パッチワークっぽいストーリー。最近舞台から遠ざかっているオペラ歌手の高峰三枝子があらわれるときの、「サンセット大通り」ぽさや、華のしぼむ哀しさなどは高峰さんのゴージャスさならではと思った。80年代の藤真利子が好きなのでそこは楽しめる。加藤治子岸田今日子の下町のせまっ苦しい住宅に住みながらも心はいつもオペラみたいな現実と遊離した感じとかは楽しい。

映画版 64 ロクヨン

 

 

64-ロクヨン-前編 通常版DVD

64-ロクヨン-前編 通常版DVD

 

 

 

 TV版*1に引き続き、忘れないうちに映画版「64」もみてみた。映画の方がキャストが豪華、そしてわかりやすいつくりになっている。

テレビ版の方が地面を這いずり回るような、暗澹とした空気などがリアルだったと思う。この映画版では終盤、テレビ版の決着からさらに物語があり、すべてに決着をつけてあったが、テレビ版のように語り尽くさないであとは想像に任せるようなエンディングも味があったり上等な感じもする。

TV版 64(ロクヨン)

 

64 ロクヨン DVDBOX

64 ロクヨン DVDBOX

 

 

www.nhk.or.jp

 

苦いエッジのかかった話の運び方。いつもラストに流れる画面のひりひりとかっこいいこと。最後にさしかかるまで、ずっと重苦しい空気に包まれ、この話はどう決着がつくのかと思いきや、思わぬ進展。最後までつきあってよかった。

ピエール瀧が度量と熱、バランスとアンバランスを内包した警察広報官の役をしている。その部下が新井浩文氏。とても役に添った雰囲気。

尾美としのりという人のみえかた、演技力にもこの作品の出来がかかっていたと思う。

そして私があちこちで気になるのが萩原聖人。現在主役をはることは少なくても独特の存在感があるし、ちょうどよい空気を出すと思う。

地方警察内部のあれこれも原作者の横山秀夫さんは新聞記者出身とのことでそこから着想を得ることも多かったのだろうな。