京都府立文化芸術会館ホールにて。
「文豪カバーネタ」ということで、文芸作品をもとにイッセー尾形氏が「これはこんな話だよね」と小さな劇に仕立てていくような舞台。
ゴーゴリ「外套」
横光利一「機械」
川端康成「浅草紅団」
太宰治「斜陽」
前売りのちらしには
この順番は公演順ではないです。
この4つと本番までに一本作る予定ですが、カバー元はまだ未定です。
とある。確かに順番はこの通りでなかったし、もう一作、コンビニでのストライキ闘争の話があったのだけど、元ネタは何だったんだろうなと思っている。*1客とスト中に対応させられている人を主人公に、コンビニに来るお客さんの背景をリアルに写しつつも、なんのための闘争なのかという、よく起きそうな問題をふと考えてさせられたり、でもあくまでも、それで社会をかえていくとかでなく、滑稽なシチュエーションならではの活写という形で楽しかった。
「浅草紅団」は原型まるでないそうだし、立体紙芝居の形式になっていて、他の作品だとほぼ一人の人物が相手のセリフも伝える感じの体裁なのが、この作品では、仮面をつけて何役もこなされており、これが、ちょこまかしているようでなかなか面白かった。中国の変面みたいな感じもあって。秘密組織のボスの男が山崎努風、バーのマダムも朽ちかけの薔薇のように香り高く、なんだか楽しめた。
横光利一の「機械」について、ちらしのイッセーさんの言葉は
文体が面白いので大阪弁に乗せて演じます
とあった。これがまた関西でネィティブでないひとが大阪弁を使う時のハラハラ感を全然味わわずに済んだ。とてもナチュラル。ネームプレート製作所という名前の、なんだか劇薬を扱っているらしい工場の物語。強弁による不思議な雄々しさもあり、これは原作を読みたくなった。
この公演、fiorentinaxさんとご一緒させてもらったのだけど、fiorentinaxさんも書いておられるように、本当にイッセーさんよい年のとりかたをされている。少し前にNHKスペシャルの「未解決事件 國松長官狙撃事件」で姿勢の正しい老スナイパーを白いシャツを着て演じておられ、その潜在能力と不気味さ、人を喰ったような雰囲気がなんともすばらしかったが、サインの時間も白っぽいTシャツと美しい姿勢、笑顔がとてもすてきだった。
www.nhk.or.jp
イッセーさんと装いということでは、ドラマ「カルテット」で「死ぬ死ぬ詐欺」をしていたピアニスト役の、帽子とマフラー姿がどっちが水色でどっちが赤だったか、記憶が曖昧だけどそういう色のあわせかたが、イッセーさんの白髪と美しく調和していて、またその姿が憎みきれない愛嬌と虚勢をうまくあらわしていてとてもよかった。
www.tbs.co.jp
↑「カルテット」は恋愛ドラマなんかって思っているひとにもおもしろいつくりになっていたと思う。
イッセーさんのホームページは下に。公演の記録がトップページにあって、今回の舞台に出た作品を過去に演じられた時のことも載っている。
issey-ogata-yesis.com
イッセーさんの舞台は、端っこに演じる衣装がかかっていて、そこで見せながら着替えをし、メイクをされ、それがまた楽しいのだが、 着替えている時にみえる筋肉のしっかりついた身体がまた素晴らしく、これを要にされているなあとつくづく感じた。