windshipさんのこと

BBS時代から親しくさせていただいていたwindshipさんが10/3亡くなられた。お通夜お葬式、火葬場までお供させていただき、家に帰ってさびしさがこみあげる。家族の時もお葬式でその人のことを思って集まってた人が散り散りになってそれぞれの生活に戻る時一番さびしくなったのだけど、今回もそうだ。

windshipさんとの思い出はものすごいボリュームになっていて、余命宣告をきいたときからそれなりに覚悟はしていた喪失感がじわじわときている。ぎりぎりまで美しいものたのしいもの、すばらしいものを一緒に味わえたそのことを感謝しよう。

windshipさんにいただいて紹介しようと思っていた西賀茂の霜月というお店の琥珀 instagramより

https://www.instagram.com/p/Boi63CTHJMT/

 2月から5月の木の芽琥珀が一番有名らしいけどこの柚子蓼もとても爽やかで美味しかった。夏の川辺をイメージした涼しげな琥珀。5月下旬から9月中旬までの販売。夏がおわってしまった。。

 

神宮希林

映画『神宮希林 わたしの神様』公式サイト

この中での、お伊勢さんにまつわるありがたい装束をお店の方にプレゼントされかけて何度も固辞する希林さんの話を以前きいたことがあり、ほぼそれの確認の意味でみはじめたのだけど、この断る感覚わからないでもないなあ。ここまでしっかり断れるわけではないけれど、希林さんは掃除の時に、着られなくなった服をモップの先にくっつけて「しまつする」、最後まで使い切るという話をされていたので、ただ置いておくだけになることが決まっている装束を受け取るわけにはいかない気持ちだったんだろうな。それが宗教的なものなら尚更いい加減には扱えないし・・という気持ちすごくわかる。

番組の中で何度も挿入される森永エンゼルの音楽が希林さんが、伊勢神宮に行って感じたことの要なんだな。なんというか、よりどころ、支えとしている人がいるよ、その思いが一番尊いということ。東北の被災地も訪ねられそこでもやはり、小さな小さな神社を気持ちの支えとしてお祭りを営んでいる人たちの姿に注目されていた。また、家を買われるにあたってお祓いをしたほうがいいといわれたけれど、住むのは自分だから専門家のお祓いでなく、自分が一心に祈ることで通じさせるという話。伊勢神宮がどうというより、希林さんの宗教観に触れる作品だった。

 

早射ち犬

田宮二郎×天知茂×坂本スミ子、「犬」シリーズの常連の熟練した楽しいやりとり。見れば見るほど天知茂さんが好きになる。田宮二郎とのやりとりがじゃれあいのようになってますます面白い。それが、刑事は刑事としての線引きがありつつの、でとても魅力的。そして、小沢昭一。この人も「鉄砲犬」*1でも出てこられたなあ。

財津一郎が「~してチョウダイ」っていうキンキン声の決め台詞を使いつつなかなかおいしい役。見どころ満載。テーマ音楽も、かっこいいんだけどかっこよすぎず、庶民の味方の鴨井大介(←田宮二郎の演じたガンマニアの名前)だよという空気が漂っていてきいていて楽しい。 

早射ち犬 [VHS]

イッセー尾形の妄ソー劇場 文豪カバーその2 2018 in 京都

京都府立文化芸術会館ホールにて。

「文豪カバーネタ」ということで、文芸作品をもとにイッセー尾形氏が「これはこんな話だよね」と小さな劇に仕立てていくような舞台。

 

ゴーゴリ「外套」

横光利一「機械」

川端康成「浅草紅団」

太宰治「斜陽」

 

前売りのちらしには

この順番は公演順ではないです。

 

この4つと本番までに一本作る予定ですが、カバー元はまだ未定です。

 

とある。確かに順番はこの通りでなかったし、もう一作、コンビニでのストライキ闘争の話があったのだけど、元ネタは何だったんだろうなと思っている。*1客とスト中に対応させられている人を主人公に、コンビニに来るお客さんの背景をリアルに写しつつも、なんのための闘争なのかという、よく起きそうな問題をふと考えてさせられたり、でもあくまでも、それで社会をかえていくとかでなく、滑稽なシチュエーションならではの活写という形で楽しかった。

「浅草紅団」は原型まるでないそうだし、立体紙芝居の形式になっていて、他の作品だとほぼ一人の人物が相手のセリフも伝える感じの体裁なのが、この作品では、仮面をつけて何役もこなされており、これが、ちょこまかしているようでなかなか面白かった。中国の変面みたいな感じもあって。秘密組織のボスの男が山崎努風、バーのマダムも朽ちかけの薔薇のように香り高く、なんだか楽しめた。

横光利一の「機械」について、ちらしのイッセーさんの言葉は

 

文体が面白いので大阪弁に乗せて演じます

 

とあった。これがまた関西でネィティブでないひとが大阪弁を使う時のハラハラ感を全然味わわずに済んだ。とてもナチュラル。ネームプレート製作所という名前の、なんだか劇薬を扱っているらしい工場の物語。強弁による不思議な雄々しさもあり、これは原作を読みたくなった。

 

この公演、fiorentinaxさんとご一緒させてもらったのだけど、fiorentinaxさんも書いておられるように、本当にイッセーさんよい年のとりかたをされている。少し前にNHKスペシャルの「未解決事件 國松長官狙撃事件」で姿勢の正しい老スナイパーを白いシャツを着て演じておられ、その潜在能力と不気味さ、人を喰ったような雰囲気がなんともすばらしかったが、サインの時間も白っぽいTシャツと美しい姿勢、笑顔がとてもすてきだった。

www.nhk.or.jp

イッセーさんと装いということでは、ドラマ「カルテット」で「死ぬ死ぬ詐欺」をしていたピアニスト役の、帽子とマフラー姿がどっちが水色でどっちが赤だったか、記憶が曖昧だけどそういう色のあわせかたが、イッセーさんの白髪と美しく調和していて、またその姿が憎みきれない愛嬌と虚勢をうまくあらわしていてとてもよかった。

www.tbs.co.jp

 

↑「カルテット」は恋愛ドラマなんかって思っているひとにもおもしろいつくりになっていたと思う。

イッセーさんのホームページは下に。公演の記録がトップページにあって、今回の舞台に出た作品を過去に演じられた時のことも載っている。

issey-ogata-yesis.com

 

イッセーさんの舞台は、端っこに演じる衣装がかかっていて、そこで見せながら着替えをし、メイクをされ、それがまた楽しいのだが、 着替えている時にみえる筋肉のしっかりついた身体がまた素晴らしく、これを要にされているなあとつくづく感じた。

 

 

*1:2019/3/5 朝日新聞の芸能欄を読んでいて、佐多稲子の「女店員とストライキ」という作品だとわかる。あと一緒に仕事をされていた森田さんが亡くなられていたことも記事を検索していて知った。こちら。イッセーさんからのお知らせが以前は森田オフィスというところから来ていたけれど最近変わったなと思っていた。イッセーさんのHPには「今まで僕のライブを楽しみにしてきてくださった みなさんに向けてホームページを立ち上げることにしました。長年お世話になった森田オフィス/イッセー尾形・ら(株)を 離れてフリーになりまして、次なるライブの準備をしている段階です。」とだけあるけれど、HPを作られたのは2017年で森田さんが亡くなられるより前で、詳しい事情はよくわからない。

ドラマ漬け

fiorentinaxさんのブログで「シックス・フィート・アンダー」というドラマの紹介を読み、見始めたらおもしろくて、今まですきま時間にテレビをみていたのが、amazon primeのこの作品の配信をみてしまう。

堅物の自分は融通の利かない部分が自分とそっくりの次男ディヴィッドにはじめは悪感情を抱いてしまったが、fiorentinaxさんと感想を分かち合い、回をすすめていくたびに、ああディヴィッドのいうことはもっともだ・・と応援しはじめている。

全く違ったタイプの兄との関係、西川美和監督の「ゆれる」*1も思い出す。(兄弟の配置が反対だが、ちょうどあんな感じ。)

兄の彼女、精神科医夫婦の娘のブレンダ。なんか分析的なのがイヤな感じに作ってある。でも視聴者はイラつくのだけど、お相手の男の方はそれで安心したり、雨降って地固まるになったり・・(その時の彼女のしたり顔がなんなんだよ、って感じではあったが・・)・・ほんと彼女と長男をみていると、女の方があけすけだよなあとつくづく思う。

 ↓第一話

秘密

秘密

 

 もうひとつは、週末イッキ見ドラマということで、日本映画専門チャンネルでやっていた「最高の離婚」。普通に放映している時はなんと入り組んだタイトルと思っていたが、坂元裕二氏の脚本「カルテット」や「anone」で大好きになって・・みてみたらやはり評判通りおもしろい。いえてるなあということが一杯で・・

エンディングのシリアスな芝居仕立てみたいな雰囲気が「カルテット」と似ているなあ・・

 

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キツツキと雨

沖田修一監督の評判は以前からきいていたけれど、先日友人が今話題の映画「カメラを止めるな!」からのゾンビ映画つながりでこの映画の話をしていて、タイミングを感じて録画してあったのをみることにした。

おもしろかった。林業に従事してる役所広司ゾンビ映画監督の小栗旬。バラバラの世界が接点を持つことで自分のものの見方に影響を与えられ、世界がちょっとだけ変わる感じ、それがおおげさすぎない感じでとてもよかった。

ゆるいいい話でまとめてなくてこの人はこういうことがしんどくて・・というのがちゃんと表現してあってそこが信頼できる。

村のおばちゃんたちの台詞なんかもとてもリアルで、役所広司小栗旬をあらわすにあたっての描写がとても細やか。そこがこの映画をしっかりしたものにしていると思う。

 

 

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廃市

twitter高畑勲監督の「柳川掘割物語」*1の話が出てきて、その流れで柳川で撮影されたこの映画をみてみた。この映画は現実の柳川の町の話ではなく、柳川にインスパイアされて作られた架空の町の話ということになっており、古風な水路のある町が大林監督らしい風味で、美しく、そして、ちょっと遊び心をつけ加えたようなユニークさで描かれている。

ストーリー自体は「転校生」みたいにみてすっきりするとかいうものではないけれど、ある青年がひと夏で体験した水路のあるまちの空気やひとの美しさを、古風に幻想をこめて描くという文学的な作品になっている。

最後、青年が帰る時に映る鉄道の姿に郷愁を感じるが、どうも佐賀線という廃線になった路線らしい。(鉄道に詳しい家族の話とこちらを参照)

根岸季衣がしとやかで控えめな姉の役。あるときから、偏屈な老け役みたいなのが多くなった気がするけれど、ちょうど80年代初頭なら舞台の「蒲田行進曲」でも小夏という、美しいけれど寂しげなヒロインの役をされていたなあ・・(映画版の松阪慶子の感じとはまた風合いが違っている印象。)

小林聡美が新しいものにあこがれながら古い町の中で生きていく、姉よりは現実的な妹の役。まんまる顔で、当時の二十歳前くらいのお嬢さんというのはこういうファッションだったかもなと懐かしい。そして、その後の彼女の出演作でのすてきな姿を重ねてみたり・・(最近ではドラマ「anone」がとてもよかった。映画「紙の月」*2も彼女を頼もしく思ってみていた。)

そして、小林聡美の家の使用人みたいな感じで出てくる尾美としのりがものすごくよかった。控えめで、でも思いは伝わって・・

映画に出てきたお祭が気になったけれど、こちらのブログによると5月に行われる「沖端水天宮祭」を再現したとか・・峰岸徹入江若葉演じる素人歌舞伎の舞台が楽しいし、町全体が古典芸能を嗜むという設定になっていて、さらりと一節など流れるのがとても粋だ。

入江たか子小林聡美の祖母役)、入江若葉の出演も、お二人のこと、大林監督はお好きで、入江たか子をおとしめた溝口監督に、ドラマ「麗猫伝説」*3で仇討までされたよなとうれしく拝見。

 

 

 

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