黒い画集 あるサラーリーマンの証言

アプリ版ぴあに載っていた東京・池袋の古書店往来座ののむみちさんの下の記事を読んで、みてみた。


黒い画集 あるサラリーマンの証言 - ぴあ

 

松本清張ものってほんとにみてるものの気持ちをそらさない。そして、「わるいやつら*1なんかもそうだったんだけど、この映画も登場人物が追い込まれるのをみて楽しんでしまう罪悪感を、因果応報なんだからと堂々と享受させてしまうようなところがあって、まあとにかくおもしろくみられた。小林桂樹氏が気が小さく今の地位を奪われたくないのに都合よくこっそり浮気しておこうというサラリーマンをぴったりの感じで演じている。アリバイで二回映画が使われていて、キネマ旬報なども小道具になるのもおもしろい。

 

黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]

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 みたのは東宝のvhs版

 

 

かくて神風は吹く

ビデオジャケット解説によると、敗戦色濃くなった昭和19年春に公開された特撮映画とのことで、情報局国民映画で、陸軍省海軍省、軍事保護院の後援とのこと。

タイトルからしてまごうことなき国策映画だが、扱っているのは元寇のほうで、博多湾上の海戦を、大日本映画(後の大映)が東宝特殊技術課の応援を得て、描いているそうだ。台風の迫力、先日9月の台風を体験した身にリアルに感じられた。

国策映画ということでキャストも豪華になっているらしい。バンツマ、千恵蔵、右太衛門、アラカンの四大スター勢揃いとのことだが、隣同士の武士でふとしたことから確執が起きるバンツマさんとアラカンさんの様子が核になっている。バンツマさんは破天荒に目立っているし、アラカンさんは頑固な敵役と見せかけて。。という、文楽や歌舞伎の「もどり」のような配置でそのマイナスからの跳躍がアラカンファンの私にはとてもかっこよくみえて!後年のゆっくりした姿を基準に考えたらびっくりするようなきびきびした指揮。そして流れは違うがこの感じ、「網走番外地*1のときも覚えたカタルシス

 

 

わが街わが青春-石川さゆり水俣熱唱

 

わが街わが青春-石川さゆり水俣熱唱- [IF<INDEPENDENT FILMS > DVDシリーズ2 公害の原点・水俣から学ぶ]

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みたのはvhs版

水俣病関連の土本監督のドキュメンタリーのシリーズに石川さゆりの名前があってはじめみたときは、どういうことなのかなと思っていたら、青春を迎えた胎児性患者の人たち(「水俣・若い患者の会」の方々)が何か自分たちでやってみようということで熊本出身の石川さゆりのコンサートを開催したことを記録した映像だった。患者さんたちの自分もできることを何かしたいという思いは、私も脳出血で身体不自由になり長い闘病生活を送った母を通してリアルにわかる。施設にいるお年寄りの患者さんにぜひみせてあげたいという若い患者さんたちの気持ちも、病を得ているからもっとお年寄りに寄り添えるのだなあと、こちらも自分の拙い経験から感じられる。しかし、この映画の良いところは、よく安手のテレビ番組や映画にあるようなここで泣きましょうみたいな変な効果音で観客の情緒をコントロールするのでなく、事実を淡々と伝えているところ。土本監督の仕事なのだから当たり前なのだろうが、さすがそこが一流と感じた。

はたちの石川さゆりの姿も素晴らしく、これから石川さゆりをみる視線が変わりそうだ。そして、石原慎太郎環境庁長官として水俣を訪問し、このコンサートに道筋をつけた話もまじえられ、ともすると石原慎太郎的なひとのことを一色の色で考えがちだった自分の気持ちにも新たな視点を与えられた。(検索すると石原慎太郎水俣の人への暴言→謝罪などもすぐ出てくるので評価はなかなか難しいのだけど、先日NHKで放映された「ザ・ベストテレビ」でも、本年度のギャラクシー賞を受賞した「教育と愛国」を放映後、とりあえずどんな相手でもインタビューして生の声をひろうことの重要性の話がでてきて、はっとさせられたし、はじめに評価ありきでなく本体にあたってみることの重要性というものも感じる昨今である。)

 

 

非行少年/陽の出の叫び、ゆけゆけ二度目の処女

藤田敏八の「非行少年/陽の出の叫び」(1967)と、若松孝二の「ゆけゆけ二度目の処女」(1969)をみる。

 

www.nikkatsu.com

 

「ゆけゆけ二度目の処女」については映画復刻レーベルDIGより

ゆけゆけ二度目の処女 of New Site 5

 

両方60年代後半の時代の空気をとても感じる作品。前者は池袋、と目黒区での撮影とのこと。後者は解説を読んだ感じでは原宿セントラルアパートなのかな・・

「ゆけゆけ二度目の処女」の方が、生きていることへの復讐という感じで純文学を読んでいるような気持ちに。パートカラーが印象的。「非行少年~」の方は、イギリスの怒れる若者たちのシリーズのような、体制や自分自身への苛立ちというものを強く感じた。前者の方は詩的跳躍、後者は現実からの叫びみたいなところにその軸足が置かれているように思える。「非行少年~」は、少年院の先生役久米昭の存在が安定感も与え、かつ、その方向性を決めているような・・

 

陽の出の叫び?非行少年 [VHS]

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ゆけゆけ二度目の処女 [DVD]

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 みたのはいずれもvhs版

 

ギケイキ 2 奈落への飛翔

「奈落への飛翔」とはなんとかっこいい副題であろうか。まさにパンクな。

町田氏ならではのリズムの良さ、関西弁のビビッドさを楽しむ。

現代におきかえた言葉で読みやすいにも関わらず「義経記」に忠実に書かれているというこの作品、歌舞伎や文楽の「義経千本桜」でなじみの佐藤忠信や法眼といった名前が心に残るし、またさらに今度みるとき立体的に味わえそうだ。

鎌倉武士たち(梶原とか畠山)の名前はドラマ「王様のレストラン」でなじみがあり、ドラマの人物設定とこの本での各人の行動とが結構一致しておりそれも楽しめる。

最後のほうのくだり、「壇の浦夜枕合戦記」*1風間杜夫を思い出したりもしたなあ。。

 

 

ギケイキ2: 奈落への飛翔

ギケイキ2: 奈落への飛翔

 

 

 

はじけ鳳仙花 わが筑豊わが朝鮮


www.allcinema.net

土本典明監督作品。筑豊の炭鉱労働にかりたてられた朝鮮人労働者を描く画家富山妙子氏。炭鉱の朝鮮人炭鉱労働者のことは「にあんちゃん*1をみて気になっていた。鳳仙花は韓国の花、はじけた鳳仙花の種に朝鮮の人たちの思いを描く富山さん。居ずまいを正してみなければいけないようなテーマだが、画家富山さんの制作の悩みにズームしていて見やすくもなっている。富山さんの先鋭的な感じが李礼仙のナレーションとあいまって訴えるシーンは当たり前だがつらさもあるが、コリアキネマ倶楽部に解説パンフから引用されている土本監督の

実は制作の過程は、富山さんの体の中に蓄積された、帝国主義日本への抑え切れないほどの憎悪と朝鮮のひとびとへの贖罪感へのあらがいと反発が私にはあった。だが富山さんのそれには、実体験が確かにあってのうえでの表現であった。
 「ハルピンで車夫を撲りつけて平然とタダ乗りした日本人」「〝某鮮人〟として葬って恥じない戦時中の炭坑の管理者たち」……。それらをつぶさに目撃したひとのお荷物の重さに私は圧倒されないわけにはいかなかった。「私自身、いつ加害者になるかもしれない」そんな重いが切迫する日もあった。そうしたにんげん富山妙子との衝突がこの映画なのである。

との言葉に納得した。

映画の後半、治安維持法で犠牲になった同志社大学に通っていた詩人尹東柱氏のことがとりあげられていた。尹氏が住んでおられ、連行された京都の武田アパートがあった場所が自分の住んでいるところのごく近くであり、そこに石碑が建っていることから尹氏のことはとても気になっており、この映画の中で出会えたことをありがたく思った。

尹氏の元アパート前の石碑について書かれている記事をいくつかみつけた。同志社にある石碑と共に写真入りで紹介されているのがこちらこちらの記事には、下宿近辺のことがしっかり書かれていて自分の住んでいるエリアだけに胸に迫った。

 

はじけ鳳仙花 [VHS]

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 ponyman.hatenablog.com/entry/20120428/1335616370

野菊の墓

 

 聖子ちゃんバージョンの「野菊の墓」、ふや町映画タウンで、☆☆☆(これが、かなり、おすすめ)となっていて気になっていた。木下恵介監督の「野菊の如き君なりき」*1と見比べたい気持ちもあってみてみた。

「野菊の如き~」の方では、年上とかいとこ同士とかいう理由があれど、民さんと政夫さんが一緒になれない理由はもうひとつはっきりしなかったのだけど、(皆がラスト悲しんでいるところをみていると、結婚できない理由が根深い感じがしなかった。)こちらのほうでは、民さんの義理のお母さんのえげつなさなども描写されており、積極的に政夫の家ではあちらと縁組みさせたくなかったのかなという推測もできた。

50過ぎてからの鑑賞のせいか、政夫の母役の加藤治子に目が行く。着物もシックだけど上質で、大店の奥様という感じがとてもする。

下版では笠智衆が年がいってからの政夫を演じていて、川辺で昔を思い出すストーリーもふんわりと丸く政夫の頭の中として表現されていて、その辺の演出は木下版が好きだった。でも、こちらもリアリティがあったし現代人(といっても80年代の映画だが)にこのストーリーを説明するのにわかりやすく作られているように思った。たとえば政夫のことが好きだった女中樹木希林に大店のやり方を批判させたり・・

綿つみに行くシーンの山が信州の山のようだと思ったら、wikipedeiaによると松本ロケだったよう。

松田聖子のおでこ出し珍しいなと思ったがこれもまたwikipedeiaによると監督の強い意向だったよう。

ごぜさんのシーンも印象的だったけれど、木下監督版をみたときの自分の感想をみているとあちらでもごぜさんのシーン印象的だったよう。きっと原作にちゃんと出てきているのだろうな・・

野菊の墓 [DVD]

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